白露降る

***

 前と同じように、私の前で電話の相手に笑いかけていた。

 明日になれば、付き合って1年経つことになる夜だった。

 相変わらず、底に残ったチョコレートにスプーンは届かなかった。

 カチ、カチッ、ガチッ。

 ガラスって硬い。

 全然削れない。

 全然届かない。


「うるせぇ」


 顔を上げれば、眉間にしわを寄せていた。

 閉じたケータイに、通話が終わったことを悟る。

 私の手が止まると、飲み物をあおった。

 喉仏が上下する。


 スプーンを握りなおした。

 力強く握った。


 ガチンッ。

 スプーンを力いっぱい突き入れた。

 達也がギョッとこっちを見た。


 やっぱり割れない。