その姿を…器用な奴だと、心の中でこっそり称賛しながら、それとはまるで正反対の"ただデカイだけの男"に、冷たい視線を向ける。



「…お前は、何も仕事がないのか?」


「仕様がないだろ。全部、何でもかんでも自分一人で背負っちまうんだから…キルは」


そう言って、自分も不服なんだと言わんばかりに、プイッと視線を逸らすウェルシー


そのふてくされたような横顔に呆れながら、あたしは目の前に近付いてくる巨大扉の十字の模様に瞳を定めた。



何も、こんな所に閉じ込めなくても…そんな思いが過らないでも無かったが、それもまぁ致し方ない事だとすぐに心を入れ替える



「彼、まだココにいる?」

扉の前まで来ると、キルバッシュは突然の隊長の来訪に、シドロモドロに動揺する見張り番の男に向かって、至って冷静に問い掛けた。


「は、はははい!!まだ、“要観察保護処分”の指示が外されていないので、厳重に牢屋に閉じ込めてあります!!」

クイールお馴染みの胸の前で十字を切る挨拶を無駄に何度も繰り返しながら、男は声を裏返らせて答える。