「予定より、大幅に遅れちゃったね」

カツカツカツ、といつもより歩調を早めて進みながら、あたし達は慌ただしく人が行き交う廊下を進む。



…基地内は騒然としていた

先程、侵入したヴァンパイアのせいで内部は混乱をきたし、細部まで連絡や手助けが回らない状況になっていた。



「サポートに、行かなくていいのか?」

忙しなく掛かってくる無線の指示仰ぎに対応しながら、前を歩く彼に懸念げに問いかける。


「うん、うん…ああ、いいよ。それは、後で私がやるから……うん、平気だよ。このくらいでダメになるようじゃ、クイールも大した事ないって思われちゃうし」

暫く、イヤホンから聞こえてくる部下達の声に答えた後、キルバッシュは優しく微笑み返してくれた。


嫌味なく覗くその白い歯が、やはりどうにも居たたまれなくなって、あたしは思わず視線を逸らす



「侵入してきたヴァンパイア達は、全部で何匹だったんだ?」


「五匹。私達が倒した三匹の他、残り二匹はちゃんと団員達が頑張ってくれたよ」

ひっきりなしに掛かってくる無線を傍受し続けながら、キルバッシュはウェルシーの問い掛けにもきちんと答えていた。