へたれンパイア~バイオレンスな生贄~



「フィア!!」

すると、聞きなれない奴の呼び捨ての声と共に、あたしの全身は解放され、床に倒れ込む。


「……っ」

‘久し振り’の感覚だった為に、流石にすぐには立てなく少しだけ目眩がした。


「冗談じゃないぞ…!お前が他の男に襲われたなんて言ったら、後でキルに叱られんのは俺なんだからな!?」

何故か、逆キレ気味のウェルシーが、飛び蹴りをかましたヴァンパイアの前で立ちはだかって言う。


因みに…長い赤髪をなびかせて、あたしを庇うように佇むウェルシーの後ろ姿が、一瞬だけ見直すようだったのは秘密にしておいた。



「…結局は、自分の保身じゃないの」


「ウルサイ!助けてやったんだから、感謝くらいしろ!!」

そう言いながらも、少し辛そうに立ち上がるあたしを横目で見て、ウェルシーは小さく問うてくる。



「…どんくらい、吸われた?」


「大丈夫、ちょっとだけ。こんなの‘サキバシリ’程度だ」

その言葉に、ウェルシーの頬がピクリと引きつった。


「…だから、そんな下品な言葉使うんじゃ…ッ」

呆れ調子で忠告しようとした言葉は、また抉りとられるように掠められた五本の長い爪によって、中断させられた。