「理由は、お聞きになりましたか」


「何?」

しかし、突然にして、そうハッキリとした口調で尋ねてきたマティリアに、驚いた。


深い金緑色の色合いが、闇の中で妖しく光る。

それはまるで、絶対に人を寄せ付けない、孤独にいる猫のようで…



「兄が、夜には人間になってしまう理由を」

臆する事なく、真っ直ぐにコチラを見つめてくる瞳に、淡い不信感を抱いた。


理由…?アイツは、自分の事を「生まれつき」だと、言っていなかっただろうか


重く下ろされた夜の帳が、どこからか連れてきた不吉な風で、あたしとマティリアの髪を揺らす。



「…‥いや」

だから、あたしは少しの沈黙の後、そう言って真実を伏せた。


顔には、思わず自嘲の笑みが浮かんでしまいそうになるが、それさえも必死に覆い隠す。


こう言う時に、バレてはいけないのだ。悟られてはいけない。



「そう、残念…ですわ」

そう言って、深く目蓋を伏せ、何かを思いつめるように胸元に手を当てて、唇を堅く引き結んだマティリアの様子に"やはり、何かあるのだ"と直感した。



あたしが知らない、まだ何かが──…