夢と現実が混在する頭の中で、必死に自分の身に起こった出来事を思い出そうとする。


昼なのに、ただ明るいだけで無色に広がる空に、寂れた世界の縮図を感じさせた。

色付いたものが何もない光景で、枯れ果てて今にも風化しそうな木の枝が、パラパラと見えない何かに揺さぶられるように命の屑を落とす。




「……ruin area(ルーインエリア)…」

あたしは、"snow"…"雪"と呼ばれるものを見た事がない。


けれど、今目の前に広がるこの風景は、風化寸前の白い灰が降り積もり、ヴァンパイアの死骸とも思える細かい粒子が、辺りを吹き抜けて行っていた。

窓の外で風に乗ってキラキラと浮遊するそれは、一見すると、文献で見た雪に酷似しているのかもしれない。



「…そうか……連れて来られたのか…」

左肩に残る二つの窪みに指を触れながら、あたしは小さく呟いた。


自分の背にかかる長い髪の毛が、すっかり乾いている事に、気を失ってから大分時間が経ったんだと推測する。

すがるように胸元に手を当てれば、いつもと変わらぬ固い石作りのクロスの感触がそこにあって安堵した。