へたれンパイア~バイオレンスな生贄~



その瞬間、少しだけピンと張り詰めた空気が辺りを漂う。



「…言えないのか?」


恐怖でなのか意図的なのか分からないけれど…決して何も答えて来ようとしない男の雰囲気に、初めて少しだけ警戒心を抱いた。


何故か、今だけはジッと見上げてくるその瞳に見入り、人間かどうか探るため神経を集中させる。



「……ただ…迷い込んだだけ…です…」


もちろん、答えは“YES”だ。


「…紛らわしいことをするな」

コイツは、歴とした人間…本当にただ“禁止区域”に迷い込んで来ただけの一般人に過ぎない


そのあまりの取り越し苦労ぶりに、思わず盛大な溜め息がこぼれた。


そりゃそうだ…よく考えたら、こんなひ弱で情けない奴が人間以外の生き物なわけないか……



「あ…あの…もういいですか……?」


「ああ」

虹彩の見えない不可思議な瞳で、恐る恐る問いかけてくる男に、突きつけた銃を下ろしながら答えた。


そして、スカートの下のガーターベルトに銃をしまおうとして……



『GYAAAAAAAAA!!』



「!!」


「ひ、ひいぃ…!ななな…何だ!?」

突然、辺りに鳴り響いた超音波みたいな奇怪音に、あたしは一目散に走り出した。