「俺が怖い?」
それは、いつもよりも数段に低いメフィストの声音のせいかもしれなかった。
不意に上げられた瞳は、初めて見た時と何ら変わり無い気がしたのに……不思議と、急に全身が脱力する。
しっかり握っていたハズの手から銃が滑り落ち、重力に引っ張られるようにしてあたしの体は、後ろに倒れ込んだ。
それを目にしたメフィストが慌てて立ち上がり、あたしの背中に手を回し支えようとする。
でも、吸い込まれそうになる意識の狭間で薄目を開けて見た彼の口元に、鋭い牙を見つけて…一瞬、チリッと憎悪が沸いた。
──…ヴァンパイア、あたしの忌むべき最大の復讐相手
そして、皮肉な事にもそのドス黒い感情は、あたしの正気を取り戻させる。
「…く…ッ」
わざとなのか知らないけれど…あたしの体をうまく支えられなくて、一緒に倒れ込んで行くメフィストを視界に入れながら
床に背中がつく寸前に手をつき、バク転をするように彼の頭を蹴り上げた。
……と、思ったのだけれど…


