そこに、何の科学的根拠もないし理由もない。

ただ、"自分達と違う"と言うだけで迫害され痛い目に遇う。


…その中に、一体何の意味があると言うのだろう?それで何が生まれると言うのだろう?



「…愚問だ」

いつの間にか、熱い論争を繰り広げていた内なる自分を抑える為、あたしは小さくそう言葉にして打ち切った。

変わらない、何も。

あたしが、たった一人のゴートの生き残りだと言う事も…それが周りに、一生受け入れられない事実だと言う事も……



気がつくと、また深い奈落の底へ落ちてしまいそうな気持ちを切り変える為、小さく息を吸った。


すると、わずかに息苦しさを感じ…そこで初めて、周りの空気が異質な事に気付く。



…"何故、気付かなかったのだろう"と、思った。

これ程までに微弱な何者かの気配と、人の血のような残り香は感じていたのに…何故、この異質な空気の変化には気付けなかったのだろうか、と。


同時に頭に思い浮かぶのは、あのヴァンパイアの変死体を見た時の光景

何も争った形跡が無いのに、一方的に"事が済んで"いたあの様子は、今のこの基地内を彷彿とさせる。