「……」

さっきまで、シッカリ閉められていたハズの扉が開いていた事に、あたしは少しだけ驚く。


だけど、それでも特に取り乱したり、激しく動揺する事もなく…迷わず一歩、部屋の中に足を踏み入れた。

そして、廊下よりも一段と冷たい床の感覚に、一瞬だけ生理的に体がすくむ。


「……ここも同じ、か」

しかし、そこも他の部屋と同様に、室内に荒らされた形跡はなく…それなのに、ヒトの姿一人見当たらない事に、眉根を寄せた。


通称"standing room"〈スタンディング ルーム〉…皆は、‘洒落’をきかしてそんな事を言っているが、実際のところ本当の室名は誰も知らない

まだ人間かヴァンパイアか判別がつかない…そんな人物を閉じ込めておく、いわば"待機部屋"だ。


ここに拘束された者は、一体ソイツが“どちら”に属すのか身体検査を受けた後

その結果によって、"生死"を振り分けられる。


人間として解放されるか、ヴァンパイアの臨床実験体として拷問を受けるか……



「……くだらん」


所詮、同じ事だ。


人間も、ヴァンパイアも、共に同じ種族だからこそ一種の共通観念みたいなものを持ち合わせ、違う種族だからこそいがみ合う。