そして、掴んだ襟首に力を入れグッと引き寄せると、至近距離でその涙に濡れた情けない顔を睨みつける。
「ほぅ……お前は“美味そう”な女になら、誰にでも見境なく耳朶に噛みつくと言うのか」
地の底から這い上がるような低くドスのきいた声でそう言い、男の反応を煽った。
クソッ、一体こいつは何を考えているんだ……ッ!
しかし、そんなあたしの嫌疑な思考とは反対に、男は相変わらず弱々しく情けない声で言い訳にもならない言い訳を繰り返す。
「…ひっ……だって…う゛っ……すごく…いい匂いがしたから……」
「……」
そのお世辞にも“頭が回る”ようには見えない男の様子に、深く溜め息を吐いた。
ダメだ、話にならん。コイツは、ただの変質者だ。
そう素早く結論づけると、頭の思考を切り替えるようにさっさと立ち上がり、男の横を通り過ぎる。
その様子に一瞬ポカンとしていた男だったが、次には事態を把握したようにあたしの足にすがりついて来た。
「ま…待って!見捨てないでえぇぇ!!」
…どうやら、自分が取り残される環境についてだけは、敏感になれるらしい


