「お母さん。おかえり」 菜緒子は振り向いて笑った。親が子に向ける笑顔。 「ただいま。菜束、悪かったね。洗い物までしてくれて」 「別に…お姉ちゃんどうなの?」 「大丈夫。菜束は心配しないで」 蚊帳の外。 そんな気がする。 菜束は疎外感に寂しさを覚えながら部屋から消えることにした。 溜め息を背中で聞きながら。 「お母さん」 「?何?」 笑顔に向けて菜束は放った。 「私、邪魔?」 「それは──…」 菜束の望んだ答えは、返ってこなかった。