庭がよく見渡せるこの場所で、窓越しに空をみあげた。
ふと外の空気を吸いたくなって窓を開ける。大きな木の上に白い月がみえる。
その下を、飛行機がゆっくりと飛んでいく。

まだ八月だというのに、風が吹くと秋の匂いがふわりとした。
「夏休みも終わりかあ…」
すぐ目の前に秋がいるのに、夏が終わってしまうのが少しだけ寂しかった。

五時を知らせる音楽がひびく。
何かを呼んでいるような鳥の声がどこか悲しい。
いつの間にか、月は雲に隠れていた。

どんなに楽しい時でも、いつかは終わりがきてしまう。私たちは、同じ場所にとどまることができなくて。
生きている限り、それは仕方がないことで。
だから、楽しいと思った気持ちを忘れないように。胸の中にしっかりしまっておこうと思った。

カーテンをゆっくりと閉める。
ありがとう夏。また来年ね。
心の中でそっと唱えた。

(終わり)