腐ったこの世界で



伯爵が差し出したのは襟ぐりの大きく開いたドレス。ドレスのスカートは片方だけ大胆に別布が使われていた。
ドレスな片側はレースが大量に使われ、コサージュで華やかさを演出してある。左右対称が基本構造のドレスの中で、それは全く違った作りだった。

「これ…」

思わず手に取ってじっくりと眺める。少しあたしには大人っぽい気まするが、確かに可愛い。ミセス・エリアナを見れば、デザインを描いたらしい女性を呼び寄せた。

「彼女が描いたものになさいますか?」
「えっと…」

困って伯爵を見たら彼は安心させるように頷いた。あたしはそれを見てミセス・エリアナに「お願いします」と言うと、彼女は頼もしく頷いてくれた。
あたしはすぐに採寸のために違う部屋へと連れていかれる。そこで前のように下着一枚にされた。女性は素早くメジャーで採寸していく。

「ドレスを着用時はコルセットをなさいますか?」
「コルセット?」
「体型維持の矯正下着です」

そんなものがあるのか。あたしが首を横に振ると分かりました、と言って採寸は終わった。
ドレスは仮縫いを済ませた後、一回試着するらしい。それから本縫いに入るのだ。

「仮縫いが終わる頃にご連絡しますね」

店を出る前にミセス・エリアナが言った。伯爵がそれに頷いて馬車に乗り込んだ。馬車はすぐに街道を軽快な走りで進んでいく。
そのまま屋敷へ帰るのかと思ったがどうやら違うらしい。馬車は行きとか違う通りに出た。