腐ったこの世界で



あたしは昨日、医者と会った部屋に連れてこられた。天窓からは太陽の光が降り注ぎ、室内を明るく照らしている。
中央に置かれたテーブルには朝食と思われるものが並んでいた。さすが伯爵家。朝から良いものを食べてる。

「昨日はよく眠れたか?」
「まぁ……」

本当は寝たこともないようなふかふかの寝台に緊張してしまって、なかなか眠気は訪れなかった。それでもやっぱり疲れていたのか、明け方前には気づかない間に寝てしまっていたんだけど。
曖昧に笑って誤魔化したけど伯爵は気づいたらしい。それでも私に何も言ってこなかった。

「魔療師なんだけどね、」
「うん?」
「色々と忙しいらしく、明日にならないと来れないらしい」

伯爵に言われて思い出した。そういえば足を治してくれる人を紹介して貰ったんだよね。
伯爵は今日、来て貰うつもりだったらしかった。でも来れないのは仕方がない。でも一日予定が空いたな。

「暇になったことだし、ちょうど良いから君の生活用品なんかを買いに行こう」

爽やかな笑顔。あたしはもう、抵抗する気力も失せてしまった。どうせ何を言っても行くんだろうし。