通された客間はやっぱり豪華だった。あたしが寝てもあと三人は寝れそうな寝台に、ふかふかの絨毯。装飾類は豪勢なものばかりだ。
「あるところにあるのね…お金って…」
明日食べるものに悩んでいた昨日までが嘘みたいだ。夜着と言って着せられた服も絹でできている。
圧倒的な財力に、あたしは感嘆することしかできなかった。それでもあたしの買い値は尋常じゃないと思うけど。
「お休みになられますか? それとも何か飲み物でも…」
伯爵に言われてあたしの世話をしてくれている侍女は、甲斐甲斐しくあたしの面倒を見てくれている。だけどそんな経験がないあたしは、ひたすら恐縮してしまった。
「あの、大丈夫ですから…」
「…では何かありましたらお声をかけてください」
言われた言葉に頷くと侍女は部屋から出ていった。そうしてようやく、あたしは体に入っていた余計な力を抜いた。
貴族やお金持ちは毎日こんな生活をしているのか。…余計に疲れたりしないのかな。
あたしは怖いくらいふかふかの寝台に潜り込み、ため息をこぼす。
「…嘘みたい…」
まだ夢を見ているみたいだ。あたしは頭を枕に乗せながらそう思った。医者に貰った薬が効いてきたのか、眠くなってくる。
あたしはそれに身を任せ、ゆっくり目を閉じた。

