冷たい視線。道行く人の好奇な視線が集まる中ですら、それを気にした素振りはない。これからどうしたらいいのかわからない少年に、少女が提案をする。


「わたしと一緒にお城へいこう? 王様がきっと力になってくれるよ、絵本作家のお友だちもいるの」

「王様と知り合いなのか?」

「うん。わたしもね、王様に助けてもらったの。お城にいてもいいって言ってくれた優しい人」

「俺が行ってもいいのか?俺は――……」


 記憶もない厄介者。


 そんなものと、一体誰が関わりたいだろう。もし記憶があったとするのならば、自分だってそちら側かもしれない。それなのに少女は。


「わたしを信じて」


 少年は今度こそ何も言わなかった。揺るぎのない瞳と言葉には、どんな言葉も敵わないのを知っている。これ以上ここにいるのもそろそろ限界で、少女の小さな手に引かれついて行く。