冬の華

行く当てもなくフラつく街で、
通り過ぎる色褪せた風景。

「何やってんだよ…」

一人呟いた溜め息が、
風に拐われる。

突如、
それは目の前に現れた。

人波に溶け込んでいるようで、
異質な気を放ったそれは、
揺らめきながら、
真っ直ぐ向かってくる。

人という障害物を避けることなく文字通り真っ直ぐ…。

誰も気付いてないのか?

明かに自分目がけ進むそれを、
直視できず、
視線を外す。

仕方ないじゃないか…。
今の俺には何も出来ない。

結界を張ることも、
戦うための武器も、
何も持ってない…。

通り過ぎるのをただ待つだけ…。

気付くなよ。
サッサと消えてくれ。