「だ…大丈夫ですか?」

胸に抱えた女性に声を掛けるが、
何が起こっているのか
理解出来ない様子で、
見上げている。

「怪我は、大丈夫ですか?」

もう一度、
出来るだけ優しく話し掛けた。

のそのそと…
腕の中を抜けて座った。

見た限りでは怪我はなさそうで
安心した。


「すみません、救急車…」

話し掛けるが…、
ただ、黙って俺を見つめている。

彼女は駄目だな…。
他に誰か…。

動かない体に、
動かない頭…、
唯一動く目だけで、
見渡した範囲内…
耳を澄ましてみても…