イジワル王子とお姫様

そんな心の声が聞こえたのか、人混みに入る一歩手前でナツキくんが振り返る


「早く来いよ」


「…うん!」


「あ~腹減った…」


ナツキくん、辺りの店舗を物色する


「あ!お嬢ちゃん、ラーメン食べてって」


通りがかったお店の従業員さんが、私たちに試食用の小さなカップを手渡してくれる


「函館ラーメンだよ。家に帰って冷凍庫に入れれば一年もつよ!もちろんすぐ食べてもOK。鍋に入れて湯がけば、あっという間にこの美味しさ」


キャッチコピーのように、おじさんの口からスラスラと繰り出される言葉


その言葉に応える前に、試食用のラーメンをもらおうと、私たちの横からたくさんの手がおじさんに伸ばされる


私たちはその迫力に圧倒された