「もう少し良い仕事、無いの?」
 流石(さすが)に悲愴感の漂うヨッタ。

「馬鹿だな、三百円も貰えれば本懐(ほんかい)だろうが。珈琲も飲めるし。」
 ジャスは、瞳をギラつかせる。

「…まあ、良いけど。」

 ヨッタがまた欠伸を掻いた。そしてある物に視線が注がれた。

「…その日本刀、売れば…」
 そして言った。


 ジャスが本気モードになった時、使う武器がある。日本刀、しかもかなりの業物(わざもの)らしい。

「売ればって…お前な…」

「そもそもジャスは、何で刀なんて持ってるんだよ。」
 訊ねるヨッタ。

「いいじゃねーか、俺が刀を持ってても。」
 ジャスはのらりくらりと話を逸らす。

「ふーん。別に構わないけど…この宇宙船(家)のオーナーって、俺なんだよね…家賃払って貰おうかな。」
 ヨッタの眼が意地悪く光る。

「…お前なぁー!…幾らだよ、払ってやるよ!」

 身を乗り出すジャス。

『また始まった…ヨッタとジャスの漫才…』ポゴが思った。そして眠い目をこすりながら、ヨッタの体の中に姿を消した。

 どうやら“お眠”のようだ。

「そうだね…家賃、月八万円。」
 適当に答えるヨッタ。

「はあ?…どこの御大臣様だよ!!」
 テンパるジャス。

「相場としては安い方だよ。…話してくれれば、“ただ”にしてやるからさ。」
 もはや手の付けられない、ヨッタだった。

「…分かったよ。話してやるよ。」
 やがて、ジャスが話しだした。


 それは今から百五十年程前の出来事だった。