あたしは、診察室を出ると、真っ直ぐエレベーターへと向かった。 途中、行き違う病院のスタッフが、あたしを見て会釈する。 いつもの光景── あたしも、軽く会釈して微笑みながら、通り過ぎた。 エレベーターを5階で降りて、その部屋に向かった。 ─院長室─ そのドアの前であたしは立ち止まる─ ─目を閉じて、大きく深呼吸を一つした。 コン、コンッ… 「はい、どうぞ…」 柔らかな声が部屋の中から、響く─ あたしは、何も言わずドアを開けた。 *