「秀樹、そっちは?」

「駄目だ。・・・・見失ったか」

「マジ?!あ〜・・せっかく走ったのに・・」

袋小路の奥を睨みながら武人が悪態をつく。二人の額にはうっすらと汗が浮かんでいた

「とりあえず戻るぞ。ここにいても仕方がない」

「わかったよ。あ〜あ・・・」

傾きかけている日をぼんやりと見ながら武人が歩き出す。秀樹も、何も言わずにそれに従った









「たっだいま〜!!」

「仕事帰りくらい静かにできないのかお前は・・・・」

「秀樹こそ、ただいまくらい言えって」

「俺の家じゃない」

「またそういうことを〜」

「お二人とも、そのくらいにしてくださいね?」

入り口で低レベルな争いを始めた二人を、少し幼さの残る声が諌める

「あっれ、シンファじゃん。いつ戻ったんだよ?」

「お二人と入れ違いです」

シンファと呼ばれた女性は笑みを浮かべて、そのまま手に持っていたファイルを差し出した。反射的にファイルを掴んだ武人が顔をしかめる

「これって・・・・・」

「安心してください。休み明けの分です」

「あ、さいですか・・」

なんとも言えない表情の武人にシンファは笑顔のまま続ける

「お休み前にちゃんと報告なさってくださいね。それと、秀樹さん」

「なんだ」

「レティ司令官がお呼びでしたよ」

「・・わかった、すぐ行こう」

歩き出そうとした秀樹を武人が慌てた様子で止めた

「おい秀樹!お前報告は!?」

「任せた」

それだけ言って秀樹はまた歩き出した

「はぁ?!!ちょっ、失敗報告俺だけにしろってか!!まちやがれこら!!!」

武人の叫びなど聞こえないかのように、施設の奥へと向かって