――タンッ! いつの間にか、走り出していた俺はその壁の向こう側へと 一歩、踏み出す。 「……あれ?」 そこに、瑠璃の姿はなかった。 見間違え、かな? そう一瞬考えたものの―― あの、残像は確かに瑠璃だ。 壁に消える前の一瞬。 慌てた表情をした瑠璃を、まだ思い出せる。 ――クスッ。 瑠璃が何しに来たのかは知らないけど。 帰りに聞けばいいか。 くるっと、方向回転をした時。 「卯月くん」 名前を呼ばれて、振り向いた。