「勇介、昨日ごめんね。」


「俺は良いけど。
奈々は大丈夫だったの?」


「うん、まぁ何とか。」


そう、と勇介は短い言葉に留めてくれる。


あたしの腕を取っている沙雪は興味津々といった様子だし、大地くんも目をぱちくりとさせているから。



「じゃあ、俺ら行くわ。」


「ばいばい。」


そして彼らはまた歩を進め出す。


沙雪もまた、ばいばーい、なんて言ってるが、あたしとは違い、ニヤけ顔。


まぁ、第一段階の任務完了って感じだろう。



「うわー、大地くんと喋っちゃった!」


沙雪は声を潜め、それでもあたしの体をぺしぺしと叩きながら、興奮して顔の筋肉を緩めている。


痛いなぁ、と思いながら、また曖昧に笑った。



「ね、超格好良いと思わない?」


まぁ、見るからに沙雪の好きそうなタイプではあるが。


あたしには興味の欠片すらないのでとりあえず、そうだね、と返しておいた。



「奈々、ホントありがとー!」


そして抱き付かれた。


沙雪は廊下の真ん中できゃっきゃと騒いでいて、正直人の視線が痛いのだが。



「さゆさぁ、今度は相手のことちゃんと見極めて、慎重にいきなよ?」


「わかってるってー。」


そんな軽い返事を聞きながら、大丈夫かなぁ、とやっぱりちょっと心配になった。


勇介もまた、昨日同様、元気がないみたいだったし。