「トキ!
ちょっと俺、この馬鹿家まで送ってくるから。」


「はいはい、どうぞ。」


シンちゃんが店を抜けるのなんて日常なので、トキくんは気にすることもないご様子だった。


そして彼は車のキーを片手にさっさと行ってしまうので、仕方がなくもあたしは、その後ろに続く。



「てか、これじゃああたし、シンちゃんと何かあるとか思われちゃうじゃん!」


「思わせときゃ良いだろ。」


コイツめ、他人事だと思って適当なこと言いやがって。


もう怒る気にもなれず、不貞腐れるようにあたしは、シンちゃんの車の助手席へと乗り込んだ。



「何よ、ゲイのくせに。」


「だから、ゲイ馬鹿にすんなっつの。」


男専門の上に、あたしのオムツまで替えたことのあるシンちゃんだし、本当に心配症の兄のよう。



「お前とりあえず、不純異性交遊禁止な。」


「同性なら良いの?」


「んなこと言ってねぇだろ。
挙げ足取んな、馬鹿。」


「なら、不純じゃなきゃ良いんだ?」


「まぁ、そうだな。」


渋い顔をして、シンちゃんは言う。


あたしは窓の外を見つめ、先ほどの勇介の顔を思い出した。



「ねぇ、純粋な恋愛ってどんなの?」


漏らした言葉に、返事はない。


結局そのまま、あたし達は何も言葉を交わすこともなく、シンちゃんはマンションの下まで送ってくれた。