「は?」


思わず眉を寄せるあたしと、驚いた顔の勇介。


シンちゃんは、構うことなくあたしの腕を捕まえた。



「俺も一応奈々の保護者代理なんでね、そう何度も持ち帰られちゃ困るんだよね、お前カレシでもないくせに。」


一気に言葉を並べるシンちゃんに、あたしはきょとん顔だ。


確かに、勇介と初めて会った日には、シンちゃんの目を盗んで店を出たけども。


口元を引き攣らせるあたしを、勇介は一瞥する。



「別に何もしませんよ。」


「そういう言葉を真に受けるほど、俺もガキじゃねぇの。」


何でシンちゃんが勇介に睨みを利かせてんだかわかんないけど。



「ちょっ、シンちゃんお店どうすんのよ!」


「店長の俺が法律なんですー。」


なんて魔王なんだ、この人は。


だけどもこれ以上この人を怒らせると大変なので、あたしはため息を混じらせた。



「ごめん、勇介。
あたしシンちゃんに送ってもらう。」


あたしを見てからシンちゃんを見て、勇介はわかった、と一言だけ。


そして彼だけがきびすを返すのを見送り、シンちゃんに蹴りを入れた。



「痛ぇだろ、蹴ってんじゃねぇ。」


彼は舌打ちを混じらせ、やっとあたしの腕を掴む手を離してくれる。



「何考えてんの?」


「だって俺、アイツ信用してないもん。」


確かに、勇介は信用に足るような人間ではないけども。


でも、帰り際は寂しそうな顔に見えたから、どうにも気掛かりだ。