うっす、と彼はいつもの不貞腐れ顔。


金髪で、ネクタイさえ締めていない、着崩した制服姿。


ふわぁと欠伸をした彼の顔に、何とも緩やかな朝を感じさせられる。


が、別にあたし達が付き合っているなんてことはない。



「なぁ、週末お前何してた?」


ぎくりとして、恐る恐るヒロトの顔を見た。


まさか、名前も知らない男とセックスをしました、とも言えないし、思わず曖昧に笑ってしまう。



「寝てた、かな。」


大して何もしていないのだから、嘘ではないけど。


あの日の翌日、本当に勇介の言葉通りに空は晴れ渡り、あたしは自宅マンションのベランダから星空ばかり見ていた。


都会のネオンに濁ったそれは、とても満天の星とは言い難かったけど、でも、やっぱりあの人は魔法使いだったんじゃないのかと、今では思う。



「そういやさぁ。
お前、彼氏と別れたんだって?」


「…誰から聞いたの?」


「樹里が言ってた。」


あのお喋りめ、と舌打ちを混じらせてしまう。


ヒロトとは去年、同じクラスだった。


樹里と仲良くなって、そしたら同じ中学出身なのだという彼とも仲良くなっただけの話しだが。



「何で言わねぇんだよ?」


「アンタにいちいち報告することでもないでしょ?」


「傷心なら俺が慰めてやろと思ったのに。」


マジ迷惑、とあたしは言う。


スカした顔して、こいつはいつも、あたしを口説いてくるのだ。