当分返って来ないと思っていた化学の教科書は、意外にも、授業が終わるとすぐに持って来られたことには驚いたけれど。


樹里と沙雪の企みが怖くて、あたしは勇介を早々に追い返した。


あたしの化学の教科書は、ヤツが馬鹿みたいなラクガキを施してくれ、未だにタヌキらしき動物が住み着いている。


なのでもう二度と貸さない、と心に誓ったのだが。


それ以来、特に沙雪が積極的に、やつらのグループとの交流を持とうとしていた。


まぁ、あたしには関係のない話だと思いながら、無視してはいるけども。



「奈々と勇介ってホント話しないよね。」


樹里はすでに彼のことを、当然のように呼び捨てで呼んでいた。


そしていつも、不思議そうに言うのだ。



「変な関係ー。」


まぁ、互いにストーカーしてるだけ、とも言えないし。


ぶっちゃけあたしは勇介以外見てないので、未だに沙雪が言う大地とやらも、どれかはわかんないわけで。



「だからあたし、あんな軽薄なヤツに興味無いって言ってんじゃん。」


そんな感じで話を終わらせることが多いのだ。


まぁ、すでにヤッちゃってます、とも言えないわけで。


樹里はそれがとてつもなく気に入らないらしく、どうにかしてややこしくしたいらしいが。


本当に、学校とは疲れるところだ。