「つまり、奈々が勇介くんと仲が良いってことは、あたしも大地くんと仲良くなれそうなわけじゃん?
大地くんってさぁ、一年の佐川っちより格好良いもんねぇ。」


佐川っちでさえわかんないが、つまりはあたしをダシにして、沙雪はその大地とやらを狙うつもりらしい。


可愛い顔して随分と計算高いことを考えているヤツだ。



「大丈夫よ、奈々。
ヒロトには内緒にしとくし、恋愛相談ならこの樹里様にお任せだし!」


お前もか。


たかが教科書の貸し借り程度で、あたしと勇介とヒロトの三角関係を狙っているらしい。


で、自分は高みからの見物で楽しみたいのだろう。



「マジ、どんだけあんたら腹黒いのよ?」


それもこれも、あの馬鹿の突飛な行動の所為だ。



「てゆーか、別にあたしと勇介はマジで何でもないんだって。」


「わかんないじゃん、向こうはどう思ってんのか。」


いや、そりゃそうだけど。


思い当たる節はありすぎるが、でも、あたし達は未だ、番号を交換したのに一度としてそれを活用したことはない。


それ以前に、やっぱり会っても会話らしい会話なんか未だにしないのに。



「さゆ的直感だけど、勇介くんはきっと奈々のこと好きなんだよ!」


どうしてそう断言するのかナゾだけど。


てか、沙雪の勘なんて大して当たらないし、興味もない。



「あんたらあたしで遊びたいだけじゃん。」


バレた、と言った顔で、ふたりは顔を見合わせた。


呆れ返るようにあたしは、長くため息を吐き出すばかりだ。