第4校舎は実験棟で、生徒はほとんどこの場所に来ることはない。


おまけに職員室からは一番遠いし、なのであたしの見つけた最高のサボりスポットなのだ。


もちろんヒロトには内緒だし、アイツに言われたら困るので、樹里にも沙雪にも内緒にしている。


適当に階段を昇り、腰を降ろして壁に寄り掛かった。


日陰のこの場所は、空気がひんやりとしていて、心地が良いと感じてしまう。


このまま寝ようと思って目を瞑っていると、足音が聞こえてびくりとした。


先生とかだったら逃げられないし、これはヤバいのかもしれない、と思っていると、階段を登って来た人の姿にまた驚いた。



「あ、奈々だ。」


勇介だった。


思わずほっと安堵していると、「サボり?」と聞かれて頷いた。



「ここ、俺だけの秘密だったのに。」


「それってあたしの台詞だから。」


相変わらず、同じようにカーディガンを腰に巻き、だらしなく緩めたネクタイと、チュッパを口に咥えている姿。


やっぱり似てるな、と思いながら笑った。


勇介はおもむろにポケットから何かの鍵を取り出し、指に引っ掛けてくるくる回す。



「しょうがねぇから俺の特別の場所、教えてやるよ。」


「…何それ?」


思わず眉を寄せて聞き返したが、彼は上を指差した。



「…まさか、屋上?」


「ご明答。」


勇介は得意げに唇の端を上げる。


屋上なんて立ち入り禁止で、おまけに入ったこともなく、あたしは目を輝かせてしまう。


勇介が先に行き、あたしはまるで冒険でもするように、彼の後ろをついていく。