『今日の夜は、きっと星が綺麗だよ。』


勇介からそんな電話が掛かってきたのは、春休み最後の日。







「見て、星すごいね!」


あたし達はあの図書館の裏で、肩を並べて星を眺めていた。


相変わらず、ママとシンちゃんは飲み明かしてて不在だし、トキくんは人妻との密会を楽しんでいる。


勇介のお父さんは海外出張が多いらしいけど、でもあたしにまでお土産を買ってくれたりもするのだ。


何だかみんなで親戚のようだと思うけど。


あたしと勇介は、何かある度にここに来ていた。



「俺さ、決めたんだよね。」


ふと、彼は呟いた。



「卒業したら、大学行こうかな、って。」


「……へ?」


「ずっとさ、親への反抗とかじゃないけど、勉強なんかクソ喰らえだと思ってて。
でも、将来の夢とか目標とかないけど、今は真面目に頑張るのも悪くないのかもな、って。」


勇介は、ちゃんと自分と向き合い答えを出したのだろう。


曖昧な風に言いながらも、空を仰ぐ瞳に淀みはない。



「誰のためでもなく、自分のためにさ。」


柔らかく笑って、滑らされた視線。


目が合い、あたしも強く頷いた。