「ちょっとちょっと、呼び出しといて一番最後に登場?」


あたしはおばさんのように文句を言った。


ふたりは隣のテーブルに座り、体をこちらに向け、「ごめんねー。」なんて心にもなさそうに笑っていた。



「つーか、土屋とか呼んでねぇし。」


ヒロトは怪訝そうに眉を寄せる。



「じゃあ葛城がいなくなれば?」


勇介はそれが当然のように返し、いつも通りだと思いながらもあたしは、笑いを堪えることに必死だった。


が、沙雪とスッチは大爆笑だ。


補習などでも常に一緒だったあたし達6人は、すっかり仲良くなっていた。



「てか、良い?」


コホン、と咳払いをし、スッチは声を上げた。


何なのかと思えば、彼は沙雪を一瞥し、またあたし達に顔を向け、言う。



「俺ら、付き合うことになったから。」


照れたような、でも嬉しそうな顔。



「今更かよ!」


すかさず突っ込んだのはヒロトで、思わず笑ってしまう。


窓から漏れるのは春を前にした暖かな陽で、おめでと、とあたしは言った。


それぞれにそれぞれのペースがあるけれど、でも着実に前に進んでくれているのなら、それはとても喜ばしいことだ。



「なら、もう大丈夫だね。」


樹里はやっぱり母親のような優しい瞳。


そして彼女はヒロトを見た。



「うちら、学校辞めることに決めたから。」