どうやら恥ずかしくなっていたたまれなくなったらしい勇介は、珍しく怒りながらそう言った。



「あとはもう、俺らがいる必要はないよ。」


「勇介くん!」


と、呼び止めたのはママだった。



「うちの子は貸すけど、ちゃんと家まで送り届けてね?」


そして彼女は手をヒラヒラとさせる。


どんなに過去を知ったって、この人の自由恋愛主義に変わりはないらしい。



「勇介!
お前のこと許したつもりはねぇけど、今までのことは水に流してやる。」


シンちゃんもまた、先ほどの顔が嘘のように俺様だ。


そんなことには少し呆れたものの、あたしと勇介は、ふたり手を繋いでシンちゃんの店を後にした。


外にはすっかり夜の帳が下り、肌寒さは感じたものの、全てを知った今は、どこか自分の存在を誇れる気がした。



「俺ら、兄妹じゃなかったね。」


「やっぱ逃げずに聞いて良かったよ。」


「そうだね、奈々のおかげなのかもしれない。」


帰り道は、先ほどの話で笑った。


勇介のお父さんは格好良いね、シンちゃんって立派だったんだね、なんて。


互いの過去を知っただけで、何故だかあたし達の間には、目に見えない絆が生まれた気がする。


偶然というだけの、頼りないものだと思っていたけれど、ふたりが出会ったことには意味があったと、確かに感じた。


それはきっと、今日のこの日のためだったのだろうから。


もう、迷うことはない。


あたし達は、一緒にいて良いんだということ。