それもまた、初めて聞くママの胸の内だった。


今まであたしに見せていた顔とは違い過ぎて、だからこんなにも誇れる人だったのだとは知らなかった。


そして、それも全てあたしのためだということ。



「娘が今ここにいてくれるのは、土屋さんのおかげです。」


「ナナさん、それは違います。
間違いなくあなたが立派に育てたからだ。」


そう言って、彼は伏し目がちに笑った。



「どうやらうちの愚息とも、付き合い浅からずといったようですしね。」


その言葉には、あたしと勇介の方が笑って顔を見合わせてしまう。


けれどもお父さんは、ふと寂しそうな顔に変わった。



「勇介、ちょうど良い機会だから、お前にも聞いてほしい。」


話したいことがあるんだ、と彼は言う。



「お母さんとは、もうダメだろう。
どうにかしたかったけど、やっぱり無理だったよ。」


「わかってるよ。」


「せめてお前が家を出るまでは、と思っていたが。
これは親のエゴかもしれないが、時間を掛けても良いからどちらについていくか決めてほしい。」


土屋さん、とママはそれを遮ろうとした。


けれども彼は首を横に振り、更にそれを制止する。



「ナナさんのことが関係ないと言えば嘘になるけど、それでも責任はわたしにあります。
だからこれは、うちの家庭内ことなんです。」


お父さんは少し辛そうな顔で、そう言った。


だからきっとまだ、勇介のお母さんのことを想っているのだろうと思う。