外はいつの間にか夕刻の陽に染まっていた。


勇介のお父さんとあたしに血の繋がりはないけれど、でも、今まで話に聞いていた“父親”と会うということ。



「奈々、良い?」


彼は全てわかっているかのように、聞いてきた。


あたしがこくりと頷けば、勇介はそれを見てから通話ボタンを押す。


緊張が走った。



「親父、大事な話があるんだ。
どうしても、今すぐ来て欲しい場所がある。」


そして彼は、息を吐いた。



「浅倉静香さんが親父に会いたい、って。」


勇介はこの店の名前と場所を告げ、電話を切った。


あたし達はその顔を見る。



「驚いてたよ、親父。
でも、来るってさ。」


ママとシンちゃんは安堵したように顔を見合わせるが、あたしは視線を下げる。



「奈々が嫌なら、俺らはもう帰ろう?」


どうしてこの人は、そんなあたしの小さな不安さえも見抜いてしまうのだろう。


それはきっと、いつも勇介は、あたし自身を見てくれていたからなのかもしれない。


親子だからとか、責任とかじゃなく、想ってくれていたから。



「大丈夫だよ。」


勇介と一緒ならば大丈夫なんだと、もう何度思ったことだろう。


今もまだ、互いに繋いでいる手を離すことはない。


そしてあたし達は、ただその時を静かに待った。