彼女はやはり“ナナ”という源氏名のキャバクラ嬢で、働きだしたばかりの18歳。


自分より2つ上ではあったが、妙にサバけているところもあれば、驚くほど頼りないところもあり、変な女だと思ったそうだ。


親とは折り合いが合わず、この街でひとりで生きていくのだと、強い瞳で言っていた。


それは自分と重なる部分でもあり、だからふたりは仲良くなった。


とは言っても、それは友達に近いもの。



「真哉ってさ、何で彼女作んないの?」


いつかは聞かれるのであろうと思っていたこと。


彼女にとっては素朴な疑問だったのかもしれないが、でも怖かった。


だってそれが理由で、自分は地元を離れたのだから。



「俺、女ダメなんだよ。」


それは、まだ幼かった彼が、誰にも言えなかったこと。


でも気を決し、静香にだけは打ち明けた。



「何それ、同性愛者ってこと?」


「…引いた?」


「良いじゃん。
何か格好良いよね、ゲイって響き。」


そんな、人生最大の告白でさえ、彼女は笑い飛ばしてくれた。



「それは恥じらうことじゃないよ。
異性だろうが同性だろうが、真哉は人を愛せるんだからさ。」


だからやっぱり感謝してるんだ、と彼は言う。


本当に、心の底から救われた気がして、泣けるほど嬉しかった言葉。


その日から、ふたりは前にも増して仲良くなり、その存在は親友でもあり、この街で共に生きる戦友にも近く、まるで姉弟のような関係になったそうだ。


互いに家族がいないわけではない。


でも孤独で、だからこそ必死で、この街で身を寄せ合い、そして励まし合った。