「…お前、まさかっ…」


嘘だろ、と言いながら、シンちゃんは勇介から手を離した。


知らないのだと言ってくれればまだ、望みはあったのかもしれないけれど。



「あたし達のこと、話してほしい。」


トキくんは、何も言わずに裏口から出た。


シンちゃんは困惑するような瞳を揺らしながら、そんな馬鹿な、と呟く。



「ママが水商売だったことも、あたし知ってるよ。
ママにお金送ってたのが勇介のお父さんだったってことも、知ってる。」


そこまで言ってやると、彼は息を吐く。



「じゃあ、お前は何を聞きに来た?」


「あたしと勇介は、血の繋がりがあるのかどうか。」


声が震えた。


勇介は、握る手の力を強める。



「んなもんねぇよ。」


「…えっ…」


「奈々は確かに土屋さんの娘だ。
でもお前らに血の繋がりはねぇんだよ。」


言葉の意味がわからない。


あたしと勇介は顔を見合わせるが、まぁ座れよ、とシンちゃんは促す。


彼は一気に疲れたような顔になり、カウンターの中にある椅子に腰を降ろした。


あたし達は向かい合うように座る形になり、シンちゃんの吐き出す煙だけが揺れる。



「何の因果なんだよ、まったく。」


そんな呟きが、虚しく消えた。


シンちゃんは遠い日を思い出すような目をし、宙を仰ぐ。



「20年近く前だよ、俺と静香が出会ったのは。」