「俺やっぱ、葛城のことは一生好きにはなれないだろね。」


手を繋ぎながら歩く道。


だけども勇介は困ったような顔をしていて、「嫉妬しちゃう。」なんて可愛く言う。


あたしは笑った。



「とりあえず、シンちゃんのお店に行こう。」


「…いや、だってあの人は…」


「勇介、何か勘違いしてない?
シンちゃんは女なんか興味無いし、あたしの育ての親みたいなもんだよ?」


ゲイだけど。


と、言うと、彼は心底驚いたような顔になり、笑ってしまう。



「あの人は、あたしの出生の秘密を知ってる。」


今まで、何があっても教えてくれなかったけど。


あたしは“大人”になんかなれてないかもしれないけど、でも、今なら受け止められるから。



「だから、お願い。」


わかったよ、と勇介は言ってくれる。


どうして直接ママや彼のお父さんのところに行こうと思わなかったのかは、わからない。


けれどあたし達は、導かれるようにそこに向かった。


何故だかシンちゃんのところじゃなきゃダメなんだと思ったんだ。