教室を出て歩いていると、向こうから息を切らして走ってくるスッチが、あたしを見つけて呼び止めた。



「奈々ちゃん、ちょっと来て!」


「何、どしたの?」


思わず眉を寄せてしまえば、彼は呼吸を整えるように息を吐く。



「ヒロト、あのままじゃヤバいんだ。
放っといたらまた問題起こしそうだし、その前に奈々ちゃんどうにか出来ない?」


だから探していたのだと、スッチは言った。


そんなことを言われてしまえばあたしだって関係ないとは言えないし、いつもそれなりにヒロトの所業は心配していた。


わかったよ、と言うと、スッチは安堵したように笑う。


そしてふたりで校舎裏に向かった。


途中、勇介とすれ違ったけど、でもあたし達が目を合わせることはないし、他人なのだと思っていたかった。



「ヒロトさぁ、また昨日もお母さんと大喧嘩したらしくて。
今日はマジ、俺の話でさえも聞いてくれないんだよ。」


お手上げだね、なんて話を聞きながら、辿り着いた校舎裏。


ヒロトはそこに座り込んで煙草を吹かしていて、先生に見つかったらと思うとひやひやする。


傍まで行くと、あたし達に気付いた彼は舌打ちを混じらせる。


スッチは睨まれていたが、曖昧に笑った彼は、あたしだけを残して逃げるようにその場を去った。



「機嫌悪いんだって?」


そう言ったのだが、ヒロトは煙草を投げ捨て立ち上がる。


腹の虫が治まっていないような顔で、背の高い彼に睨み下ろされている気になり、正直怖い。



「悪ぃけど俺、今笑ってお前の相手出来そうにねぇから。」