「さゆ、チョコ食べてると幸せなんだよねぇ。」


「アンタの幸せほど安いもんはないね。
てか、最近太ったっぽく見えるよ。」


樹里は笑いながら口を挟む。


沙雪はその瞬間、ムンクの叫びみたいな顔をしていた。



「さゆは太っても可愛いって。」


あたしまで笑うと、



「それって全然褒め言葉じゃなーい!」


そんな風に叫び、彼女はあたしの体をぺしぺしと叩いた。


その光景は小さな幸せに見えて、でも薄っぺらなメッキの上に重ねられたものだった。



「まぁ、この中で一番幸せなのは、間違いなく沙雪だろうけどね。」


どうして樹里は、言葉にするのだろう。


あたしは目を逸らし、沙雪は戸惑いの表情を浮かべる。


何故、こんな関係なのにあたし達は、それでも“友達”としていることを選んだのだろう。



「何それ。
この中でカレシがいんのはあたしだけだっての。」


別に喧嘩を売るつもりはなかったけど、でも癪に障ったし、言葉には棘があったのかもしれない。


ただ、樹里に壊されそうで、だから怖かった。


睨めば彼女は、肩をすくめるように何も言わない。


だからその場から一番に去ったのは、あたしだった。


今日も外は雨が降っていて、北の方はもう雪が降っていると聞いたけれど、でもこの辺りでそんな綺麗なものは拝めなかった。


白い色した雪に覆われればまだ、見たくもなかったことから目を逸らせたかもしれないのに。