「…家、帰んなくて平気なの?」


どういう家庭なのかは知らないが、でも一応、そんな風にして聞いてみた。


勇介は宙を仰いだまま、心配されないから、と一言だけ。


そんなところもまた、あたしと同じだと思ってしまう。



「奈々は?」


「うち、放任だから。」


と、いうか、ママは遊び歩いてます、とは言えないわけで。


それだけ返すと、彼はふうん、と言った。



「あんま出歩くなよ?」


「それ、アンタにだけは言われたくない。」


「そうかも。」


少なくとも、この一週間学校で見ていた彼よりずっと、今の方が穏やかに笑っている気がしてならない。


多分こいつもまた、学校ってところは苦手なんだと思う。


とにかくあたしと似てるところばかりで、だからどうしても気になってしまうのだろう。


春の夜風は少しばかり冷たくて、でももう少しだけ、ここにいたいと思った。



「アンタってさ、軽薄そうだけど良いヤツっぽいね。」


「何それ、俺そんな風に見えてた?
つーか見るからに良いヤツっしょ、俺。」


「良いヤツは自分でそんなこと言わないから。」


「うわっ、腹立つー。」


勇介が笑うから、あたしも少しだけ笑った。


笑ったら、何だかもやもやとしていたものが少しだけ晴れたような気がした。