言葉はあたしに突き刺さる。


それは今までのこと全てを否定しているということ。


例えば一緒に見た景色も、共有していたはずの気持ちまでも、黒く塗り潰された気がした。



「頼むから泣かないで。」


その優しい口調すら、何も変わっていないのに。


だからこそ、抱き締めてくれる体に腕を突き立て、勇介を拒絶した。



「こんなこと、しないでよ!」


涙の混じる瞳で、でもそれがあたしの精一杯だった。


彼はやっぱり悲しげな瞳を揺らし、そして何も言わずに体を離す。



「ごめん。」


謝罪の言葉が聞きたいわけじゃない。


でも、唇を噛み締め、夜の街へとあたしはひとり、きびすを返した。


風は冷たく、心は千切れてしまいそうだ。


もう、誰の言葉も信じられなくて、でも誰かに縋っていたかった。


自分を強い人間だと思ったことは、一度もない。


だけども、こんなにも弱くて、そして求めることしか出来なかったなんて。


まだ冬ではないはずなのに、吐き出す吐息は白く消える。


涙で滲んだ瞳で見上げた空には、こんな場所だからか、星の煌きを見つけることは叶わなかった。


ただ何もかも、夜の闇に飲み込まれてしまえば良いのにと思う。