「煙草って美味しいの?」


いぶかしげに問うてみれば、「吸ってみる?」と彼は笑う。


そしてフィルター部分があたしの方へと向けられた。



「あんま一気に吸うなよ?
ゆっくり吸って、んで肺に運ぶ感じ。」


難しいことを言いやがる、と思いながら初めて吸い込んだ煙に、あたしはごほごほと咳き込んだ。


涙目になりながら気持ち悪いー、と言うと、勇介は笑っていた。


そして、笑いながら自分が買ったはずのジュースを差し出してくれる。


お礼を言うことも出来ずに急いでその蓋を開けて飲むと、まだ喉が変な感じだ。



「…こんなんのどこが良いの?」


「慣れだよ、ただの。」


高校二年、煙草デビューのあたし。


もう二度と吸うことはないと思いながら、不貞腐れたように勇介を睨んだ。



「マジこんなのありえない。」


膝を抱えると、彼はそんなあたしをよそに、得意げに煙を吹かす。


今更ながら、間接キスをしてしまった、と思ったのだが。


改めて見ると、私服の勇介はやっぱり格好良くて、煙草を吸ってる姿が様になっている。


何だか制服の時とは違い、同い年には見えない感じ。



「俺さ、夜って何か苦手で。」


そう言って、彼は宙を仰ぐ。


あたしと同じだと思いながら、チュッパを咥え直した。


バニラのそれは、あたし的にハズレで、口の中に広がる味に違和感ばかりを覚えてしまう。