ヒロトの家に来ること自体は久々だったが、やっぱりいつ見ても、乱雑としている様子に変化はない。


みんなで部屋に入り、早速男ふたりは煙草を咥える。



「つーか今年寒くね?
温暖化って嘘なんじゃねぇの?」


「ヒロトってマジで馬鹿。
温暖化だと冬は寒くなるんだっての。」


「何だそれ。」


彼らが言い合い、あたし達は笑う。



「奈々、何か飲みもん取って来て。」


ヒロトはそれが当然のように言った。


彼のお母さんはいつも不在なので、あたしももう、慣れたものだ。


仕方がなくも立ち上がると、それをスッチが茶化すように笑う。



「おいおい、見せつけんなってー。」


「じゃあスッチが取って来てよ。」


「ははっ、奥さん怖いでーす。」


どやされながらも文句を言い、渋々ひとり、部屋を後にする。


あたしとヒロトは表面上、すごく仲の良いカップルに見えているのだろうということに、何故だかほっと安堵した。


スッチと沙雪は未だに付き合ってはいないみたいだけど、でも普通に手を繋いだりしているし、似たようなものだと思う。


でも、あちらの方がよっぽど、あたし達よりカップルらしい気がした。


だから余計に、見せかけの仲の良さに縋っていたのかもしれないけれど。


冷蔵庫からパックのジュースを取り出し、コップ4つを持って部屋に戻った。



「あぁ、おかえりー。」


スッチはやっぱり笑っている。


全てを知っているくせに、なのに何も知らないみたいな顔で、いつも通りの笑顔だった。