「でもさ、ヒロトが真面目に学校来るようになったのは、奈々のおかげなわけじゃん?」


切り出すのはいつも、彼女の方。


そこで初めて、視線がぶつかった。


でも樹里は、かわすようにケラケラと笑う。



「いっつも一緒だし、仲良いよね。」


「普通でしょ、別に。」


言ったあたしを見て、彼女はまた目を逸らした。


それからすぐに、樹里は友達に呼ばれて教室を出てしまう。


あたしは窓の外へと視線を移した。


最近では、理由もわからないのに樹里と話をすることが苦痛だ。


沙雪はこちらを一瞥したが、でもすぐに横で何も言うことなく、携帯を取り出して遊び始める。


随分と大人しくなったもんだ。


見つめた先には緑を失った校庭があり、ブレザー姿の生徒達は、肌寒さを感じながら歩いている。


目に留まったのは、あの人の姿だった。



「…え?」


あたしの呟きが聞こえたのか、沙雪も携帯をいじる手を止め、同じように窓の外へと視線を移した。


そして彼女は、驚いたようにその先に見たものとあたしを交互に見比べる。



「何で勇介くんと樹里が一緒にいんの?」


言葉にして聞かれたって、あたしにその理由がわかるはずがないじゃないか。


ふたりは少し険悪そうに話し込んでいる。


もちろんここからではその内容なんかわからないけど、何故だか苛立ちは増した。



「奈々!」