ヒロトと付き合いだして約10日、あたし達はそのほとんどの時間を一緒に過ごしていた。


だから付き合っていることはすぐに周知の事実となり、きっと勇介にも伝わっているのだろうと思う。


まぁ、あの人が今、何をしているのかなんて知らないけれど。



「ねぇ、ヒロトくんって優しいの?」


沙雪が興味津々といった顔で聞いてきた。



「優しくないとこが優しいよ。」


「意味わかんないってー。」


ヒロトはいつも、ぶっきらぼうでわかりにくい。


でも、それが精一杯で、あたしのことを想ってくれているのが伝わるから、目に見えない優しさは感じている。



「奈々までノロケんなっての。」


顔を上げてみれば、樹里がいた。


彼女は沙雪から借りたノートを返しに来たようで、笑いながら輪に混ざる。


先に目を逸らしたのは、あたしの方だった。



「樹里こそ最近、3年の人と仲良くしてるって聞いたよ。」


「あぁ、あんなの勝手に向こうが寄ってくるだけだよ。
鬱陶しくて嫌になるんけどねぇ。」


「良いじゃん、年上なんだし。」


「あんなもん一個の違いじゃんか。」


互いに目さえ合わせずに笑い合っているあたし達は、本当に“友達”なのだろうか。


こういう時の沙雪は、決まって会話に口を出すことはない。