夜というものは、恐ろしく長い。


なのに時間の潰し方さえわからず、散歩と称した深夜徘徊ばかりを繰り返してしまうのだが。


ママのことは、少し羨ましいと思う。


まだ若いし、彼氏と遊んだり友達とランチしたり、それなりに人生を楽しんでいるようにも見えるから。


なのにあたしは、一体何だと言うのだろう。



「あ!」


家の近所のコンビニに入ったところで、知ったそれと目が合った。


こんな時間にこんな場所で会うなんて思ってもみなくて、あたしは曖昧にしか笑えない。



「奈々ってこの辺に住んでんの?」


先に口を開いたのは、彼――勇介の方だった。



「アンタは何やってんの?」


「買い物。」


それは、見ればわかる。


彼の手には買い物袋があり、その中には煙草やジュース、チュッパが覗いている。


何となく、こんなところで立ち話というのも気まずくて、どうしたものかと思ってしまうが。



「それ、何味?」


指を差して聞かれたのは、あたしが食べているチュッパのこと。



「バニラ。」


「朝はコーラだったよね?」


確かに今朝会ったとき、「それって何味?」なんて聞かれ、コーラと答えた記憶はあるけど。



「あたし、いっつも見ないで買うの。
くじ引きみたいにさ、好きな味出たらラッキー、って。」


へぇ、と彼は言う。