翌日もまだ、秋雨が空を濡らしていた。


ヒロトとあたしは当然のように一緒にいて、東階段に座り込む。



「ねぇねぇ、何やってんのー?」


階段の上から声を掛けられ、ふたり、顔を上げた。


そこには沙雪とスッチ、そして樹里もいる。



「つーか俺ら、付き合ってっから。」


ヒロトの言葉に、3人はぎょっとしていた。


あたしはチュッパを咥えたまま、どこかその顔を滑稽な目で見つめてしまう。



「そっか、良かったじゃん!」


言ったのは樹里だった。


沙雪とスッチは戸惑ったような顔をしているが、でも彼女は笑う。



「ヒロトの粘り勝ちって感じだよね。
あたしも嬉しくて笑っちゃうよ。」


あまりにも笑顔を向けてくれる樹里と、顔を見合わせた沙雪とスッチ。


それぞれに違和感を覚えたけど、でも何も言わなかった。


ヒロトはそんなみんなから目を逸らす。



「奈々、行くぞ。」


立ち上がる彼と同じように、あたしも立ち上がった。


耳を塞いで、雨音も何もかも、聞こえなければそれで良い。


聞きたいことを言葉にするのは簡単なんだろうけど、それじゃあ何かが壊れる気がしたから。


途中、カノジョらしき子といる勇介とすれ違ったけど、でも、互いに目を合わせることすらなかった。


これで良いんだと思いたかった。