「お前の好きなアレ、買って来てやろうか?」


「…どれ?」


「購買のチョコチップメロンパン。」


何でそんなことまで知ってるんだろう、って。


それと同時に、あたしと勇介はいつも同じものを食べていたのだということが頭をよぎる。


首を横に振ればまた涙が溢れてしまいそうで、やっぱり学校になんて来るべきではなかったと今更思った。



「ヒロトが優しいと気持ち悪いって。」


「うるせぇよ、じゃあ泣くな。」


保健室の独特の匂いは鼻をかすめ、思い出す数々のこと。


最終的には肩を震わせることしか出来なくて、するとヒロトは頭を抱えた。


自分が嫌で、泣いてれば彼が傷つくのだということもわかってて、また嫌になる。



「…ごめっ…」


刹那、抱き締められた。


あたしに気を使うヒロトなんてらしくなくて、だからそんな顔をさせたいわけじゃないのに、って。


なのに縋るように、今にも腕を伸ばしてしまいそうで怖い。



「何かダメだよね、あたし。
自分がこんなんだなんて思わなかったよ。」


空笑いでさえ、必死さが虚しい。


だからどうしようもなく苦しくなって、それがヒロトの所為なのか勇介の所為なのかさえもわからず、混同してしまいそう。



「…もう、大丈夫。」


それでも、大丈夫だと言い続けてればそのうちに、感覚さえも麻痺してくれる気がしたんだ。


ヒロトは何も言わず、体を離した。